双子はどっちが上の子か

私の職場には一卵性の双子(のひとり)がいる。

今日何気ない話の流れで、フランスでは二卵性双生児の場合、お母さんのお腹から最初に出てきたほうが弟・妹になり、後から出てきたほうが兄・姉になるというのを聞いた。

どうして!? と聞くと、「お腹の中の位置関係からして、奥にいたほうが先に受精したはずだから」だという。

ちなみに、一卵性の場合はどちらが上の子とか下の子とか特に言わないのだそうだ。そういえば、やはりフランスで知り合いの一卵性の双子のお子さんを紹介されたときも、どちらが上の子かなんていう話は一切聞かなかった。まあそもそも、家の中でも「お兄ちゃん」とか「お姉ちゃん」とか言わずにみんな名前で呼ぶから、双子かどうかにかかわらず順番にはそんなにこだわりがないのかもしれない。*1

 

双子でも先に生まれてきたほうが上の子となんの疑いもなく思っていたのでびっくりしたのだが、今回少しググってみて、実は以前の日本でも逆の認識が存在していたことを初めて知った。先に母親の中に入った兄・姉は奥にいるので後から生まれてくるはず、というロジックらしい。今回フランスでも言われた「先に受精したほうが奥にいるはず」というのとだいたい同じ理屈のように思われる。古代ローマで既に後から生まれたほうが兄・姉という文化があったようなので、どうやらこの考え方は結構一般的に生じるもののようだ。また、立場が下の者(弟・妹)が上の者(兄・姉)の露払いとして先に出てくるのだという考え方もあったらしく、これはなんだか武家社会文化っぽいというか、お母さんのお腹にも上座と下座的な概念を当てはめていたのかなぁと思う。

ただ日本全国みんなこうだったわけではなく、先に生まれたほうが上の子としていた地域も同時にあったようだし、体格が良いほうが上の子とか、生まれた順番ではない別の基準で決めていた場合もあったらしい。

 

現在の日本の法律では先に生まれたほうが兄・姉と決まっているが、昔は法律にも定められていなかったうえ、地域や時代によっても異なっていたということだ。日本の中でさえこんななのだから、世界では本当に多様なのだろう。

「先に出てきたほうを上の子と考えるのが自然な認識」だと勝手に思い込んでいたのだが、こんなとことろでも人の考え方っていろいろなんだなと思わされた。「自然な認識」って、そんなもの存在しないのかもしれない。

 

ちなみにだが、一卵性双生児が生まれるのには遺伝的な要因が強いそうで、例の職場の双子の人も、祖父母の代で父方・母方両方に双子がいるという話だった。そして自分の孫も双子になるのを期待しているらしいので、少なくともその人は双子でよかったと思うことが多いのだろう。一方で、知り合いの双子のお子さんは思春期にさしかかり、髪型やファッションを大幅に変えてみたりして、一緒にされるのをとても嫌がるようになってきたそうだ。同じ姿かたちの人がもう一人いるというのがどんな気持ちなのか想像が難しいし、それこそアイデンティティの問題など特有の悩みも多そうだが、やっぱりちょっとうらやましいなと思ってしまう普通の兄弟育ちの私である。

 

*1:法律とかオフィシャルな場面でどうかは知らないけれど。