今回渡仏するにあたって、パスポートの期限が滞在期間中に切れることになっていたので、日本を離れる前に新しいものを取得した*1。その際ちょっと迷ったのが、サインを何語で書くかである。
何語というか、漢字で書くかアルファベットで書くかという話だ。
アルファベットの筆記体を教わりたての頃、軽い中二病的な感じで、筆記体のサインを練習した覚えがあるのは私だけではなかろうと思う。ちょっとかっこつけたい気持ちもさることながら、私の場合は名前に母音が多いせいで、漢字よりアルファベットで書いたほうが圧倒的にシンプルだし早いという実用的メリットもあった。高校生の時に人生で初めて作った5年パスポートのサインはこの筆記体サインにしたし、その次のも同じだった。
今回の更新でそのまま筆記体サインにするかどうか迷ったのには、初めての海外長期滞在であるということが大きく影響したのだと思う。外国人として年単位で暮らすとなると、自分の日本人としてのアイデンティティに対する意識がだいぶ変わってくる。私はもともとどちらかといえば趣味など西洋かぶれな方で、日本文化にそんなに思い入れが強いタイプではなかったはずなのだが、日本人らしくいられる部分は日本人らしくしたい、という気持ちがなんとなく大きくなり、今回は漢字サインにしてみた。
それに伴って、フランスでは当然はんこは使われないので、部屋や銀行の契約だの、宅配便の受け取りだの、生活の中で発生するサインもどちらかといえば漢字でするようにしている。といっても上に書いたように筆記体のほうが現実的には便利なので、時間に余裕がなかったり書くスペースが小さかったりするときは、筆記体にすることもあるけれど。
アルファベット社会で漢字サインを使うことで問題になりそうなのは、サインを受け取った側がそれを読めないという点だろう。でも欧米人のサインだって、ぐりぐりした線だけで文字かどうかも判然としないようなものも多いのだから(もしかしたらそれでも読めるのかもしれないが…)、おそらく可読性にたいして意味はないんじゃないかと思う。むしろ漢字は誰も書けないぶん、真似できないのでセキュリティが高いという考え方もできる。
というわけで完全に自己満足で面倒くさくて時間のかかる漢字サインを使っているわけだが、受け取ったフランス人が思いがけず喜んだり褒めてくれたりすることがあって、これが結構嬉しい。見たことのない文字が目の前で書かれるのが面白いのだろう。数日前にも、アパートの工事に来たおじさんと鍵の受け渡しのためにサインをしたのだが、私のサインを見て、おートレビアーン!と大袈裟なくらい珍しがってくれ、その日1日ちょっと良い気分だった。非常に些細で単純なことなのだが、自分のアイデンティティの一部を好意的に受け取ってもらえるというのは、こんなにも心が温まるものなのだなと思う。
日本人のみなさん、漢字サイン、なかなか良いですよ。
*1:基本的には有効期間が1年を切らなければ新しくできないが、長期滞在予定であることを示せれば問題なく更新してくれる
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