セルフヘアカット!

長期で海外に滞在する際に多くの人にとって心配なことのひとつが、「美容院どうしよう問題」であると思う。

そもそも自分に合った美容院や美容師さんを見つけて納得のいく髪型にしてもらうのは日本でも結構難しいのに、言葉の通じない海外ではウルトラハードもいいところである。欧米人とアジア人では髪質も違うし、うまく扱ってもらえるか不安しかない。そして特に女性にとっては、失敗してしまったときのダメージが半端ないし、リカバーにも時間がかかる。

パリのように日本人がたくさんいる街なら、日本人の美容師さんや、そうでなくても日本語が通じたりアジア人の髪をよく知っていたりする美容師さんもいる。しかしボルドーのように地方都市となると、事情はかなり厳しいと言わざるを得ない。知り合いを通じて、他のフランス地方都市在住の日本人の奥様が通っているという、日本語が通じるパリの美容室の情報は教えていただいたのだが、髪を切るためにわざわざパリまで行くかというと、有閑マダム(死語…)ならまだしも、時間やお金や体力などのリソース的に、ちょっと私にとっては微妙なラインである。それにその奥様も、基本的には一時帰国の際に日本の美容室に行っているという話なので、やはり日本でやるのと同じようにはなかなかいかないのだろう。

また、私にはもう一つ事情がある。私の髪は多くて太くてくせっ毛という大変扱いにくい髪で、高校生のときまでヘアスタイルはポニーテール一択だった(そうして縛ったポニーテール部分も、女子高生のポニーテールという言葉から想像するようなかわいらしいものではなく、よく友人に「ぶどうみたい」と言われていた)。そんな地毛にほとほと嫌気が差していたので、高校を卒業した瞬間に縮毛矯正をかけ、その後10年以上縮毛矯正のお世話になり続けてきた。大学以降の知り合いは、たいてい私の髪はもともとストレートだと思っている。

が、縮毛矯正ができるフランスの美容室となると、選択肢はほとんどない。例の奥様に教えてもらったパリの美容室も、普通のパーマでさえお釜をかぶるタイプの機械だという話なので、ウェブサイトのメニューには縮毛矯正があるものの、大丈夫なのかちょっと尻込みしてしまう。

白人はもともとふわふわウェーブした髪の人が多いから、ウェーブを活かしたスタイルにするのがもしかしたら上手かもしれない…というわずかな希望もなくはないのだが、それにしても今の私は根元はウェーブなのに途中からストレートというカオス状態で、カットしてもらうにしてもどういう仕上がりにしたいのか、自分でも見当すらつかないのである。言葉が通じなくても仕上がりイメージの写真や絵を持って行くと良いというアドバイスをよく見かけるが、このせいでそれもどうしたらいいかわからない。

そんなこんなでぐだぐだ悩んでいる間に、髪の根元のくせは順調に復活していった。そうそう、ほとんど忘れかけてたけど、そういえばこんなだったよねあたしの髪。そして、根元のくせはどうにもならないにしても、このところ痛んだ毛先がバサバサしてきて、いよいよ限界かなという感じになってきた。

 

遅かれ早かれ放ってはおけなくなるのは自明だったので、実は日本から船便で送った荷物にAmazonで買った散髪用のハサミを忍ばせてあった。これまで自分で切ったことがあるわけではなかったが、手先の器用さにはそこそこ自信があるし、自分で少しずつ切ったほうが、あまりにも想定外ということにはならないだろうと踏んだのだ。

ケースは少しちゃっちいが、ハサミ自体は悪くないと思う。少なくとも私にはこれで十分だった。櫛はついていなかったので百均で買っておいた。

 

カットにあたって参考にしたのはこの動画。ぱっつんの市松人形にならないために、要するに頭の丸みを利用して、いい感じのレイヤーが入っているっぽくするという方法だ。

 


The Best Hair Hack ♥ How to Cut & Layer Your Hair at Home

 

「びっくりするけどこれが上手くいくのよほんとに」というコメントが並ぶ中で、最終的に決め手になったのは、やはり長期留学か何かで地元の行きつけのサロンに行けないらしいくせっ毛の台湾人の子の、熱量溢れる絶賛コメであった。台湾人のナチュラルウェイビーヘア、きっと私のと近いに違いない。

 

動画のとおりにおでこで髪を縛り、最初なので慎重に、動画よりは少なめに毛先をカットしてみた。もともと渡仏前に切ってもらったときのレイヤーがあるので、今回カットしたラインまで届かない部分もあったが、そこはまた次回考えることにして無視。前髪は仕方ないので、これまでのラインを踏襲しながら、直線的にならないようにハサミを縦にして少しずつ削っていく。こっちをもう少し、そうするとこっちも、とやっているうちにやめどころがわからなくなって、気がついたら切りすぎている…というのが素人カットあるあるだと思われるので、手を入れすぎないことを肝に銘じておいた。

結果は手前味噌ながら、そんなに悪くないんじゃないかと思う。もともとロングなので多少切ったところで大幅には変わらないのだが、色の抜けた毛先がなくなってまとまりがよくなり、見苦しさも減った気がする。DIYレイヤーも結構自然な感じである。このおでこ結びカット、使える…!

 

そのうちくせっ毛部分の割合が増えて自力ではどうにもならなくなるかもしれないが、まあそうなったときはパリにでも行くしかないと諦めて、それまではこの方法で頑張ってごまかしてみようと思う。