ボルドー観光案内 vol.3 市庁舎とボルドー美術館

なんとか続いているシリーズ第3弾。ブルス広場→サン・タンドレ大聖堂と来たので、次のボルドーのメジャー観光スポットなら大劇場あたりかなとも思ったが、vol.2でせっかく大聖堂に来たので、今回はそのすぐ隣の建物をチェックすることにしよう。

vol.2まではこちら↓

市庁舎(Hôtel de Ville)

サン・タンドレ大聖堂の入り口に向かって立ち、右側に目をやってみてもらいたい。フランス国旗がひるがえる、立派な門構えの建物が目に入るだろう。これが Hôtel de Ville、ボルドーの市役所だ。

Hotel de ville

天気が悪い写真しかなくて申し訳ない

ここを読んでいる人でボルドーの市役所に用事がある人はほぼいないだろうと思う*1が、紹介したいのはこの建物そのものだ。

このネオクラシック様式の建物は、ボルドー大司教となったフェルディナン=マクシミリアン=メリアデック・ド・ロアンが、それまで使われていた中世以来の大司教の住居が老朽化しているとして、1771年に建てたもの。彼自身は完成前にカンブレー大司教となってボルドーを離れたためここに住むことはなかったが、建物はこの経緯からロアン宮殿(Palais Rohan)の別名を持っている。また、大司教は建設費用捻出のためこの辺りの湿地帯を整備して分譲したので、ロアン宮殿を含むこの地区は彼の名前からメリアデックと呼ばれている。

フランス革命で教会が建物を手放した後は、県庁となったりナポレオンの宮殿となったりして、1835年以来、今でも現役でボルドー市役所として使われている。ついこの間のバレンタインの日には、計20年以上もボルドー市長を務めたアラン・ジュペ氏が、憲法評議会メンバーとして指名されたことを受けて、この建物で涙ながらに市長辞職の記者会見をしていた。

 

Hotel de ville2

低めの位置に下がっている明かりのデザインが個人的に好み

ロアン大司教といえば、マリー・アントワネットの有名な首飾り事件で、王妃に近づきたいがあまり詐欺師にコロッと騙されたなまぐさ大司教を思い出す。ロアン家はフランス王家とも繋がりのある大貴族で、ストラスブール大司教の世襲権を持っていたので「ロアン大司教」もたくさんいるのだが、実はこの連想は当たらずとも遠からずで、ボルドーのロアン大司教(フェルディナン=マクシミリアン=メリアデック)は首飾り事件のロアン大司教(ルイ=ルネ=エドゥアール)の弟にあたる。これだけでも、いかにこの頃の大貴族が一族で富と権力を握っていたのかが垣間見えるようだ。

 

Hotel de ville夜景

大聖堂とあわせて夜景もおすすめ

美術館(Musée des Beaux-Arts)

市役所正面からぐるっと裏に回り、アルブレ広場側に出ると、柵に囲まれた庭園になっている。この庭園を挟む南北の回廊は、ロアン宮殿の一部として、美術館にするために1880年に建てられた。

 

美術館の門

アルブレ広場に面した門。ボルドーはパリに次いでこのような19世紀の錬鉄装飾が多く見られる街だそう。

庭園側から見る市庁舎

庭園側から見る市庁舎。むこうに大聖堂北ファサードの塔が見えている

美術館はここにある北翼・南翼で主に常設のコレクションを展示をしている他、通りの斜め向かいにあるギャラリー(Galerie des Beaux-Arts)で特別展を行っている。*2
館内案内はフランス語のみだが、つくりが単純なのであまり困りはしない。作品情報については、解説文まで英訳があるのはごく一部で、タイトルに英訳が添えてあるものは多いが全てとまでは言えないという状況。オーディオガイドのようなものはフランス語でも提供されていない。アキテーヌ博物館は3ヶ国語のオーディオガイドがあったはずなので、こっちももうちょっとがんばれるんじゃないかなぁと思ってしまう。

 

南翼は、15世紀ルネサンスから、カラヴァッジョ派、オランダ絵画、バロック、18世紀啓蒙時代まで。北翼では、18世紀末からのロマン主義絵画や歴史画、19世紀の印象派や自然主義の作品、さらに20世紀キュビズムやその後の"秩序への回帰"と現代作品までを展示している。南翼から始めれば、年代順に見て回れるようになっているわけだ。

 

南翼入り口

南翼入り口

南翼の中

南翼の中。建物は細長く、分かれ道のない単純な構造

北翼の中

北翼の中。南翼と少し雰囲気が違う


有名どころでは、南翼にルーベンスが数点とティツィアーノやブリューゲル(父)、北翼にドラクロワの『ミソロンギの廃墟に立つギリシア』やライオン狩りを描いた大作*3、ルノワールの小品、ロダンの彫刻などがあるが、やはりここはボルドーなので、ボルドーに関わりのある作家や作品の展示に力が入っている。*4

まだ女流画家が大変珍しかった時代に写実的な動物画で名声を築いたローザ・ボヌールは、ボルドー生まれということで、いくつかの絵画・彫刻作品と共に、彼女の最後の作品(未完)となった馬の群れを描いた大作が展示されている。

 

アトリエのローザ・ボヌール

George ACHILLE-FOULD 作『アトリエのローザ・ボヌール』。この左側で見切れている馬の大作があり、この絵そのものも隣に展示されている

ちょっと話がそれるが、同じ北翼に「ガストン・ルルー」作の彫刻作品がある。ガストン・ルルー(Gaston Leroux)といえばあの『オペラ座の怪人』の作者なので、まさか彫刻の才能まであったのかとびっくりしたが、調べてみるとこの人は Gaston Veuvenot Leroux という別人で、ボルドーの美術学校で教えていた彫刻家だそうだ。で、ボルドーのピュブリック公園に、このガストン・ルルー氏による男装のローザ・ボヌールの像がある*5。男装は動物観察の際の安全のためと同時に彼女の好みでもあったようで、上の絵でもズボン姿だが、当時は警察の「異性装許可証」が必要だったというのだからすごい時代である。

ボルドー生まれの芸術家としてはもう一人、オディロン・ルドンが有名で、彼のためにもひとつのコーナーが設けられ、『アポロンの戦車』をはじめ、独特の幻想的でちょっと不気味な作品たちが展示されている。

 

「月の港」ボルドーそのものを描いた作品もいくつも揃っている。年代が異なると、今と同じところ・違うところがいろいろあって面白い。

 

Vue d’une partie du port et des quais de Bordeaux dits des Chartrons et de Bacalan

Pierre LACOUR(父)作 1804-1806年 ボルドー港のシャルトロン、バカラン地区の船着き場の風景

今では綺麗に整備されたガロンヌ川の川岸も、この当時はただの土手だったようだ。岸辺の様子が全然違うのとは対象的に、左側手前に描かれた2つの小さな塔がある特徴的な屋根の建物は、今でもカンコンス広場から川沿いを少しシャルトロン方面に歩いたあたりにそのまま建っている。そして川にいる船の密度がすごい!

 

Vue de Bordeaux prise de Floirac

Jean-Paul ALAUX 作 1832年 フロワラックから見たボルドー

こちらはガロンヌ川の対岸から見たボルドー。ピエール橋と、サン・タンドレ大聖堂と思われる塔が見える。もっと手前にあるはずのサン・ミシェル教会の尖塔が見えないのがおかしいなと思っていたが、この塔は嵐と雷でてっぺんが失われていた時期があり、再建に着手されたのが1853年らしいので、この絵の頃はとんがった部分がなかったのかもしれない。こちら側の岸の自然の溢れっぷりにもなかなか驚かされる。

Les Quais de Bordeaux

Alfred SMITH 作 1892年 ボルドーの船着き場

絵と同じ場所

 

19世紀も末になると、風景はもうほとんど今と変わらないように思える。カンコンス広場前の同じ場所に、だいたい同じぐらいと思われる時間帯に行って写真を撮ってみた。馬車が自動車に、レトロな路面電車が近未来系デザインのトラムになったが、川沿いの街の表情は100年前にはもうこんな感じだったようだ。

 

パリにあるような大きな美術館などにはもちろん全く敵わないが、バタバタ動き回る観光客も少なく、のんびり芸術鑑賞するには悪くない。個人的には、神話・歴史や人物画と、立体作品に好みのものが多いと思った*6。私はこういうのを見て回るのが相当遅いタイプだが、それでも南翼・北翼合わせて2時間くらいで回れる規模感である。観光の空き時間にフラッと入ってみるのも良いのではないだろうか。

アクセス・開館時間

 ボルドー美術館(Musée des Beaux-Arts de Bordeaux)

Le site officiel du musée des Beaux Arts

開館時間:11時-18時

休館日:火曜日、祝日(7月14日と8月15日は開館)

入館料:5ユーロ(18歳未満無料)

7月・8月を除く毎月第1日曜日は入館無料

ボルドー観光案内所発行のBordeaux Metropole City Pass対象

 

 アクセス

トラム:A線 Palais de Justice または B線 Hôtel de Ville 下車

バス:4・5・6・15・16・56番 Galerie des Beaux-Arts 下車

 

*1:そしてフランスのお役所仕事にはできれば関わらずにいられるほうが良いと思う…

*2:ギャラリーのほうでは、2019年4月8日まではSuzanne Lafont という写真家の作品展をやっている。

*3:火災で上部が損傷している

*4:画家ウジェーヌ・ドラクロワの父であるシャルル・ドラクロワ(本当の父親はタレーランと言われているが)は、ボルドーを県庁所在地とするジロンド県の県知事を務め、ボルドーで亡くなったため、お墓もボルドーのシャルトリューズ墓地にある。ウジェーヌ少年もそのときボルドーにいたので、そういう意味ではドラクロワもボルドー枠である。

*5:同じようにピュブリック公園に像があるボルドー生まれの画家カルル・ヴェルネの作品も美術館に展示されている

*6:そしてカラヴァッジョ派がエロい!