さよなら平成 フランスの5月1日

一応生まれは昭和だが、平成に変わったときはまだ物心がついていなかったので、私にとっては今回が実質的に初めての改元である。これまでの人生のほとんどを過ごした平成の終わりを海外で迎えることになるなんて、子供の頃の私に教えたらびっくりするだろう。

ネットで日本の様子を垣間見る限り、なんだかお正月のようで、楽しそうでちょっとうらやましい。フランスは時差があるし普通に平日だったので、年越し(?)の瞬間はいつものように顕微鏡を覗いているうちに気がついたら過ぎていた。

ちょうど新元号「令和」が発表される直前の頃、こちらの友人と日本のEmperorが新しくなるという話をしたとき、「今のEmperorはどうだったの?イメージ良いの?」と聞かれて「とっても良いよ」と迷わず答えられたのは幸せなことだったと思う。平成天皇はいつでもニコニコしてちょっとお茶目な愛妻家の素敵なおじいちゃんで、皇室に思い入れの薄い私にとっても、自分たちの象徴だと胸を張って言えるすごい人だった。これからは是非ゆっくりして、身軽に人生を謳歌していただきたいなあと思う。

フランスでも、日本の新天皇即位は「世界最古の王朝の継承」として報じられている。Le Monde紙で、”天皇”の語が”maître du ciel”(英語にするとさしずめマスターオブヘヴン)と丁寧に逐字訳で説明されていて面白い。そんなふうに考えたことなかった。

www.lemonde.fr

 

日本では新天皇即位で前代未聞の10連休らしいが、もちろんフランスにゴールデンウィークはない。そもそも祝日が少なめだし、週末にかぶっても振り替えられたりは一切しないので、イレギュラーな休日が体感として日本よりかなり少ない。そのぶんバカンスで集中してがっつり休むので、メリハリ型な文化なのだと思う。

それでも5月は、祝日が3日あってわりと集中している月だ。そして今日、5月1日もそのうちのひとつ。日本でもメーデーでデモが行われたりするが、フランスでは労働者の日(Fête du Travail)として全国的にお休みだ。今年はまたデモが特別盛り上がっているようで、ニュースで見る限りパリは大変そうである(ボルドーのデモは今日はわりと平和な様子)。

で、さすが労働者の日だけあって、お休みっぷりがすごい。去年も驚いたのだが、ボルドー都市圏は公共交通機関が完全に休みになる。日・祝ダイヤですらない。去年のこの日はまだ今のアパルトマンに移る前で、スーパーに行くにもバスに乗らなければならない郊外に滞在していたので、本当にどこにも行けなかった(行けたところで店も閉まっているので買い物もできないのだが)。さすがにパリなんかでは違うのかもしれないが、日本で考えれば地方都市だからといってバスも全部休みなんて許されないんじゃないかと思う。潔すぎて逆に感心する。

メーデーでなくても、普段から24時間開いている店なんかないし、日曜日はたいていの店が休みだ。まあ不便でないかと言えばそんなことはないが、でも別に死ぬわけではないし、なんだかんだ慣れるもので、そんなに不満は感じない。日本でも働き方改革とかで少しずつ過剰なサービスがなくなりつつあるようで、ウルトラ便利だったところからだんだん不便になるのは辛いだろうが、案外なんとかなるものなんじゃないかと思っている。

 

話は変わるが、フランスでは5月1日に大切な人にすずらんを贈る習慣があるそうだ。中学生の頃だったか、本でこの話を読んでとても素敵だと思い、5月1日に花屋を回ってすずらんを探したことがあったが、私の地元ではどこでもすずらんにはまだちょっと時期が早いということで手に入らなかった記憶がある。昨日、道ですれ違った老夫婦の奥様のほうが小さなすずらんのブーケを持っていて、ああ、あの本で読んだのは本当だったんだなあとちょっと感動した。(日本の九州で早すぎると言われたのにフランスでは咲いているのが不思議ではあるが。)

テレビでは相変わらずあちこちから煙の上がるパリの殺伐としたデモの様子が流れているが、この人たちも家に帰れば誰かにすずらんを贈るのかな、と思うと少し不思議な気分である。