どうなるフランス

先日、幼稚園生くらいのおちびさんたちの集団が、遠足なのか皆おそろいの小さな蛍光黄色ベストを着てぞろぞろとトラムに乗ってきて、「あらぁ、ちっちゃなジレ・ジョーヌね〜」と乗り合わせたおばちゃんが言っていた。

そんなほのぼのシーンをよそに、大人のジレ・ジョーヌたちは先週末も大暴れであった。政府が税金の件で譲歩したので多少落ち着くのかと思っていたのだが、もはやマクロン政権への反発は収まらず、むしろ過激化しているように思われる。ついにボルドーでも本格的に暴動が発生したようで、ヴィクトル・ユゴー通りのあたりで何かが燃えている映像が全国ニュースでも流れていた。銀行のATMや、サント・カトリーヌ通りのアップルストアなどが略奪に遭ったらしい。私はずっと上空を旋回しているヘリコプターの音を聞きながら、1日家にこもっていた。

 

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研究室の人々はデモに参加している気配はないが、院生の子の知人(口ぶりからして友達ではなさそうだったが)がジレ・ジョーヌで、警官隊が投げてよこした催涙弾を投げ返そうと拾い上げた瞬間に爆発してしまい、手首から先を吹っ飛ばしたそうだ。ここは戦場か何かか。

それだけ庶民に鬱憤が溜まっていたということなのだろうが、安保闘争なども知らない世代の平和ボケ日本人としては、そこまで荒れられること自体がもう異文化に感じられる。日本は日本で諦念に飼い慣らされすぎなんだろうとも思うが、ここまでやることはないんじゃないか。

マクロン大統領もさすがに参ったようで、最低賃金を1ヶ月あたり100ユーロ上げると言い出した。そんなこと言って大丈夫なんだろうか。上がった分の賃金を払うのは別に政府ではないのだし。

 

しかし、連日ジレ・ジョーヌばかりだったニュースが、昨夜テレビをつけてみたら様子が違った。ストラスブールのクリスマスマーケットで何か起きたらしい。中継画面で、Capital de Noëlと書かれたイルミネーションをバックに、緊急車両の青いランプが明滅している。1人死亡10人けが。平日なのにジレ・ジョーヌがまた何かやらかしたのか。feu? 火?火事だろうか?

ググったフランス語のニュース記事を機械翻訳に突っ込み、乱射事件だとわかった。犯人は逃走中で、過激思想に傾倒しているとして目を付けられていた人物。これはジレ・ジョーヌじゃない、テロだ。

死者はその後4人まで増えてしまった。

フランスの人たちは、クリスマスといえば皆口を揃えてストラスブールのマルシェ・ド・ノエルの話をしてくれるので、ぜひ見に行きたいなと思っていた矢先だった。なんてことだ。

 

「これはジレ・ジョーヌを収束させるために政府が仕組んだんだ」と言っている人もいるらしい。どこの国にもそういうデマ屋や陰謀論者がいるものなのだなとため息が出る。ジレ・ジョーヌだけでも大騒ぎだったのに、このテロがどう影響してくるのか。今のところ自分の生活に別に何かあるわけではないのだが、どうかみんな平和なクリスマスを迎えてほしい。