これもガレット・デ・ロワ!?

フランスの新年のお楽しみ、ガレット・デ・ロワ。パイのどこかに小さな陶器の人形が入っていて、みんなで切り分けて食べたとき、この人形が当たった人はその日の王様・女王様。その年1年ラッキーですよ!

…というおいしそう&楽しそうな文化があるというのは、日本でもテレビなんかで見て知っていた。

実際にフランスで迎えたこの新年、スーパーのベーカリーにこれが大量に並んでいるのを発見した。

 

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あれ…?なんか想像してたのと違うな?

 

ほら、ガレット・デ・ロワって、こういうのだよね?

 

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これこれこういうの!(※フリー素材)

 

ボルドーのスーパーで見つけたやつは、お砂糖がかかっていて甘そうではあるけど、どう見てもパイじゃないし、リング状だし…でも紙の王冠がついてるから、似たような食べ方をするのかな??

よくわからないままとりあえず買って帰って、食べてみた。ブリオッシュ生地で、何か具やクリームなどが入っているわけでもなく、ケーキというよりはシンプルな菓子パンという趣。どんどん食べていったら、入っているかどうか半信半疑だったフェーヴ(当たりの人形)もちゃんと出てきた。

 

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やっぱりこれは、ガレット・デ・ロワなのだ。

 

ホリデー期間が明けると、職場のコーヒーテーブルにも同じものが出現した。しかし、食堂で「ガレット・デ・ロワ」という札といっしょにデザートコーナーに並んでいたのは、私もテレビで知っていたパイのほうだった。

困惑していたところ、パイになっているタイプはパリなど北フランスのガレット・デ・ロワで、輪っかのブリオッシュタイプは南フランスのガレット・デ・ロワなのだと教えてもらった。パイのほうは中身がフランジパーヌ(アーモンドクリーム)なので、みんな「フランジパーヌの」「ブリオッシュの」と言って区別している。*1

ブリオッシュのほうが素朴な感じがするので、フランジパーヌタイプが本来のガレットでブリオッシュが簡易版なのではないかとか、ボルドーの人が適当で甘いものなら何でもいいんじゃないかとか、完全に失礼な推測をしていたのだが、どうやら違っていたようだ。その後ちょっと調べてみたところ、ブリオッシュタイプもちゃんと由緒正しい伝統あるものだった。なるほど、桜餅と言ったときに西日本と東日本で違うお菓子を思い浮かべるのと似たようなものか。

 

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Carte Galette et Gâteau des rois en France by Aavitus is licensed under a Creative Commons Attribution-ShareAlike 4.0 International License.

 

上の地図で、濃い緑の地域はフランジパーヌタイプほぼ100%、濃いオレンジの地域はブリオッシュタイプほぼ100%で、薄い緑と薄いオレンジはそれぞれフランジパーヌかブリオッシュが50〜75%、ということらしい。ボルドーは薄いオレンジのエリアに属しているので、ブリオッシュ優勢ながらどちらもあるということだ。確かにフランジパーヌタイプもちゃんと売っていて、私も上に書いた食堂だけでなく、近所のおいしいパン屋さんでも小さなフランジパーヌのガレットを買って食べた。職場の休憩コーナーに出てきたのは、今のところブリオッシュとフランジパーヌが3対1なので、地図の割合と一致している。

前のサン・タンドレ大聖堂の記事でもちらっと触れたフランドルの画家ヨルダーンスだが、彼の有名な絵にまさにガレット・デ・ロワを食べて宴をする「豆の王様」を描いたものが何枚かあり、そこに出てくるのはどうもパイっぽく見える(少なくともリング状には見えない)。フランスの外ではあるが、やはり北のほうはパイが主流なのだろうか。それに対してブリオッシュタイプは、フランス系移民とともに世界のあちこちで根付き、ニューオリンズ*2ではこの輪っかのブリオッシュにアメリカらしくカラフルなトッピングをした「キングケーキ」を食べるのだそうだ。日本ではパリ風ばかりなので全然知らなかったが、南仏風もそんなにマイナーというわけではなさそうである。

 

職場では、フェーヴが当たった人が次のガレット・デ・ロワを買ってくるというルールで、どうやらそれを1月の間じゅう続けるらしい。それは"ラッキー"なのだろうか、当たったらどうしようとちょっとドキドキしつつ、しばらくはおやつにふわふわのブリオッシュが食べられそうだ。

 

*1:スーパーで買ったときは、ブリオッシュのものは couronne briochée、ブリオッシュの王冠という名前で売られていた

*2:フランス語ではヌーヴェル・オルレアンである