それはどうなのバンクシー

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少し前に東京に現れたと話題になっていたバンクシーの作品らしきものが、ボルドーにも出現したようだ。

私はこれまでバンクシーについてはたいして好き嫌いも意見も持っていなかったので、このニュースでこんなに感情を動かされるとは思っていなかった。しかもマイナスの方向に。

 

イエローベストの女の子のほうはアルブレ広場に面したサン・タンドレ病院の壁、プラカードを持ったネズミのほうはブルス広場の壁だ。女の子の絵のほうは自分では見ていないが、ネズミは上のリンクの動画でどのあたりかだいたい見当がついたし、実際ブルス広場前を通るトラムからでもはっきり確認できた。

あまり大きくはないので目立たないとはいえ、ボルドーの顔であるブルス広場の、表側に面した壁である。この壁の建物は、18世紀の歴史的建築だ。(ブルス広場とそれを囲む建物の歴史についてはこの記事に書いた。)それにボルドーの古い建物の多くは柔らかく多孔質のライムストーンでできていて、この壁も例外ではない。スプレーの顔料が細かい凹凸に入り込んだら、落とすのは想像するだに大変だろうと思うし、上から塗りつぶすわけにもいかない*1。要するに、私の感覚からすれば、将来に残すべき歴史的建造物とその美に対するリスペクトが足りない。あのシンメトリーの荘厳な風景の中に自分の絵の居場所があると思ったのなら、それはバンクシー(ではないかと言われている描き手)の思い上がりではないかとすら思う。

 

国を分断する壁に穴と青空を描くとかはなかなか素敵だと思うし、去年のオークションで、作品がすごい値段で落札された瞬間に額縁に仕込まれたシュレッダーで細切れになったやつなんかは、作者にしかできない美術業界への風刺が爽快ですらあった。今度のだって、これが例えばトラムの横っ腹やメリアデックあたりのコンクリートの建物だったら、そうでなくてもドアやシャッターのような洗浄したり取り替えたりが容易な場所だったら、私はこんなに不愉快には感じなかっただろう。確かにボルドーで一番インパクトを残せるのは間違いなくここだし、ジレ・ジョーヌが毎回このブルス広場で非常に盛り上がっているのも知っている。でも、自分もアーティストなら、権力には楯突いても美には敬意を払ってほしい。まあ、このボルドーで発見された絵が本当にバンクシーのものなのかはわからないので、もしかしたら本人的にはとんだ風評被害なのかもしれないけれど。

*1:ちょっと前にジレ・ジョーヌが別の場所で似たような石の壁にやらかした落書きはきれいに消えていたので、たぶんなんとかはなるのだろうと思うが。