よーくかんがえよー おかねはだいじだよー (歳がバレる)
どこで暮らすにもお金は大事である。それが海外となると、外国人として自力ではどうにもならない部分をお金の力でカバーする、あるいはカバーできるだろうという安心感を得る、そういう意味で輪をかけて大事になってくる。
数週間程度の海外旅行とは違うので、銀行のお世話になりながら日本と現地の間でお金のやりとりをすることになるのだが、目下悪名高いマイナンバー制度の導入過渡期ということで、在外邦人にとっての状況は混乱を極めている。
マイナンバーは日本の住民登録と紐付いているので、住民票のない海外居住者にはマイナンバーが発行されない。しかし制度導入に伴い、日本の銀行はマイナンバーがなければ海外送金できないところが着々と増えつつある。これだけマイナンバーの普及がうまくいっていない状況でフル運用まで予定通り進むのかは疑わしいが、おそらくいずれはどの銀行もマイナンバー必須になるだろう。つまり、日本の自分名義の口座から海外の自分名義の口座への送金が、マイナンバーがないせいでできなくなるわけだ。冗談じゃなくまずいことになる人も多いだろうと思われる。
マイナンバー導入が始まる以前から海外に住んでいた人たちの中には、マイナンバー取得のために一時帰国して住民票を作り、ナンバー取得の後また住民票を抜いて再渡航という手続きを踏む人もいるようだ。というか正しく制度に従うなら、今のところそれしか手がない。本人も大変だし役所もいらない手間が増えるし、得をするのは航空会社くらいで、まったくもって現実的でないと感じるのは私だけではないだろう。
そもそもマイナンバーは前述の通り住民票とセットなので、既にマイナンバーを持っていたとしても、1年以上日本を離れるために住民票を抜くと失効する……ことになっている。私もマイナンバーカードは作っていないが通知カードは持っていたので、住民票を抜くときに、役所の窓口で「返納手続きをするのでマイナンバー通知カードを持って来てください」と言われた。カードを持って再度出向くと、カードの裏に返納の旨スタンプを押して返してくれた。
その後渡仏し、やっと住むところが決まって、アパートの敷金の振込のために日本の銀行口座からフランスの不動産会社にネットバンキングで送金しようとしたところ、マイナンバーを登録しなければ送金できないと表示され、正直「詰んだ」と思った。だってマイナンバー失効しちゃったし。
しかしネットでいろいろ調べてみると、マイナンバーは失効しようが復活しようが基本的には生涯変わらないという。なら失効しててもいけるんじゃね?となり、返納スタンプつきの通知カードに載っている番号を入力してみた。結果は大成功で、その後何回か海外送金しているが、なんの問題もなく取引できている。
じゃあ返納の手続きって何だったの?あの儀式いらなくない?
おそらく、銀行は個々のマイナンバーが失効しているかいないかを調べる権限を持っていないのだろうと思う。もしかしたらこれからマイナンバー運用の厳格化が進んで、失効した番号は使えなくなるかもしれないが。
しかし失効した番号でも許してもらえないと、海外居住者は本当ににっちもさっちもいかなくなる。現地で開設した銀行口座を使えと言われるかもしれないが、開設したところでその空っぽの口座にどこからお金が来るというのか。
もちろんマネーロンダリングや脱税対策の重要性はわかるが、とにかくこのグローバル化著しい時代に、海外在住の日本人のことが想定されていなさすぎてヤバい。そもそも住民票とセットにしたのが間違いだったのでは…。
とりあえずこれから海外移住する人に何か伝えるとすれば、できる限り海外でも使える銀行を探して日本にいる間に口座を作り、マイナンバー登録を済ませておけということだ。
銀行といえば、「非居住者」の問題も悩ましい。
日本に住民票のない「非居住者」は、ほとんどの日本の銀行では、国内向けと同じサービスを受けることができない。海外の住所を全く受け付けず口座を解約するしかない銀行もあるし、非居住者向け口座があっても制限が激しいことが多い。私も日本ではみずほをメインバンクにしていたのだが、みずほの非居住者向け口座はネットバンキングができず、残高の照会すら許されない。海外から使うには致命的である。
ちなみに、私は今現在メインバンクとしてソニー銀行を使っている。ソニー銀行は、非居住者になる前に口座を開設しておけば、海外に住所を移してもネットバンキングで多くのサービスを使い続けることができる*1。
また、日本円の口座以外にドルやユーロなど11の主要通貨で外貨口座を持つことができ、好きなタイミングで日本円口座から外貨口座へお金を移すことができる。円高になったときを見計らってユーロをまとめ買いできるわけだ。指定のレート以下になったら自動的に取引をしてくれる指値取引も可能なので、毎日レートをチェックしなければならないわけでもない。また、ソニー銀行はネット銀行であることもあり、外貨購入時の為替手数料もかなり安い部類だ。
私の給与は日本から日本円で出ており、毎月ではなく3ヶ月に1回まとめて振り込まれる形なので、これはかなりありがたい。現地の銀行口座にユーロで振り込んでもらうことも可能だが、その際の為替レートは完全に運次第となり、振込の時にたまたまユーロ高だったりすると、給料3ヶ月分と金額が大きいだけに、結構痛い損失になりうるからだ。
さらにソニー銀行の良いところは、Sony Bank WALLET というカードが大変便利なところだ。VISAのデビットカードだが、クレジットカード同様にどこでも使える。デビットで口座にあるぶんしか使えないし、決済した瞬間に通知が来るので安心。そして、外貨で支払うときには該当の外貨口座から直接引き落とされるので、買い物のたびに為替手数料がかかるということもない。
フランスはカード社会なので、ほんの数ユーロの買い物でもばんばんカード払いする。たまに「〇〇ユーロに満たないお会計はカードお断り」な店もなくはないが、むしろ中途半端な高額紙幣しかない場合など、「細かいのないの?カードでもいいよ?」とお店の方から言われることもままある。なので、カードが使いやすいというのは大変重要なことなのだ。
実用的な面以外でも、カードのデザインがおしゃれで、マット加工の手触りも良い点が個人的に気に入っている。このカードで使える11種類の通貨の紙幣を表しているそうだ。支払いのときにカフェのお姉さんに褒められたこともあり、そういうところでフランス人に褒められるのはちょっと嬉しい。
ここまで褒めちぎるとソニー銀行の回し者のようだが、実は1点だけ、しかもかなり大きな難がある。非居住者として登録すると、ソニー銀行からの外貨送金(仕向送金)ができないのだ。
すべての支払をクレジットや現金で完結させられるならそれでも良いのだが、私の場合アパートの契約周りで銀行振込の必要な場面がどうしても発生してしまった(前述の敷金など)。そうなると、この「仕向送金不可」に引っかかってしまうのである。
それでどうしてなんとかなったのかと言えば、そもそも渡航の際に非居住者登録をしなかったからだ。住所だけ実家に変更して、非居住者とは申告せずに今も使い続けている。
おそらく、同じように非居住者登録をせずに、グレーな状態のまま日本の銀行口座を維持している海外居住者は多いだろうと思う。それくらい非居住者向け口座は使い勝手が悪い。そしてマイナンバー登録を済ませておいたとしても、この非居住者問題はついて回る。今後もしマイナンバーのせいで銀行に非居住者と判明するようになってしまえば、海外送金の道が絶たれるかもしれない。
ソニー銀行が非居住者でも海外送金可なら完璧だったんだけどなぁ。
私はもうどうしても海外送金が必要なフェーズは過ぎたと思うので、ソニー銀行の非居住者向けサービスだけでもなんとかやっていけそうではあるが、これから渡航予定でグレーな手段は避けたいという場合は、三菱UFJ銀行や三井住友銀行*2に口座を作っておくのが安心かもしれない。
…これ、もうやめたほうがよくない?